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マッスルバックとキャビティバックの性能の違い
- プロや上級者に好まれるマッスルバックのアイアンと初心者から上級者まで幅広く支持されるキャビティバックのアイアン。
現在は、プロでもキャビティを使う方が増えてきており、マッスルバックの存在がやや薄くなってきていますが、最新のモデルにもラインナップされており、マッスルバックを好んで選ぶ方もまだまだたくさんいらっしゃいます。
今回は、そのマッスルバックとキャビティバックの違いを実際に打って細かく説明したいと思います。
軟鉄鍛造のフォージドモデルで比較試打!
- 今回検証するモデルはミズノのMP-5とMP-55。
MP-5は2015年に発売された少し前のマッスルバック。
対するMP-55はMP-5と同時に発売されたキャビティバックでいわば兄弟モデルです。どちらも軟鉄鍛造のフォージドモデルでタングステンなどの異素材を使っていないいわゆる「1枚物」で、素材上での大きな差がありませんので打ち比べるのにピッタリ。
5番、7番、9番とそれぞれを打ち比べて弾道や打ち心地などを比較してみたいと思います。
ボールをコントロールするための形がマッスルバック
- マッスルバックアイアンは、昔ながらのアイアンの形状でバックフェースに厚みがあり、小ぶりなサイズのものが多いです。
ヘッドが小さいクラブはシャフトと重心の距離を短くすることができ、操作性を高めやすくなっています。またフェースの「打点位置」を意図的に縦にずらすことでスピン量を調整できるように重心が高めに設計されています。
その分打点のミスにはシビアになっており、芯を外すと目に見えて飛距離が落ちやすくなっています。
芯を外してもミスになりにづらく、飛距離を出しやすいのがキャビティバック
- キャビティバックアイアンはバックフェースをくりぬき、そのくりぬいた分の重量をヘッドの外側に配置することで、芯を外した時のヘッドのブレを抑えるように設計されています。
細かい理論についてはひとまず置いといて、ゴルフクラブは重量がヘッドの外側に配置されるほど、ミスに強くしやすい道具なんです。つまり、キャビティ部分が深いほど重量が確保できるのでよりミスに強いアイアンが作れます。
ミスへの強さだけじゃなく、余剰重量をソール側に配置すれば、重心を下げることができるので、ロフト以上にボールに高さを出すことができ、ロフトを立たせることができます。
つまり飛距離の出しやすいアイアンが作れるのです。いいことづくめのように見えますが、この作りのデメリットとしては重さが外周部に集中すると、ミスに強くなる分操作性は低下しやすくなります。
実戦でもよく使用する7番アイアンではどんな違いが出る?
まず最初に練習でも実戦でも打つ機会が多い7番アイアンを比較してみましょう。
ドライバーのヘッドスピードが大体42m/sぐらいのプレイヤーに合わせてショットしてみた弾道と数値がこちら。赤い弾道と1番のデータがマッスルバックでオレンジの弾道と2番のデータがキャビティバックです。
わずかですがマッスルバックの方が、スピンが多く、打出角が低くなっています。ロフトは、2度ほどキャビティバックの方が立っているのでロフト通りに打ち出せばキャビティの方が弾道は低くなるはずなのですが、重心の低さが作用して、オレンジのほうが高弾道になっていますね。
これは両方とも芯でとらえた弾道ですが、芯を外すとキャビティの方が高く上がっている分、飛距離ロスが少なくて済む傾向にありますので、それだけでも打点のミスにやさしいということがわかります。
距離の出る5番アイアンの違いは?
次にロングアイアンの5番で打ち比べしてみました。
データは左の通り。7番の時と同様、赤の1番がマッスル、オレンジの2番がキャビティです。マッスルはフェード系で弾道が低めですね。
ヘッドスピードもマッスルの方が速いのにキャビティより距離が出ていません。対するキャビティは、しっかり高さも出ていますし、ドロー系でつかまった弾道。
距離と高さが欲しくなるロングアイアンほど、例え安定したミート率を持っていいて同じヘッドスピードだったとしてもキャビティの方が安定した距離を打てる、つまりやさしいと言えます。
ピンを狙いたい9番ではどんな違いが?
最後にグリーンはもちろん、ピンを狙いたいショートアイアンの9番で比較してみました。
マッスルはスピンがしっかり入り、打出し角も高め。いかにもグリーンで止まりそうな弾道。対するキャビティは打出し角が低めでスピンもマッスルと比べたら少ないですね。
しかし、飛距離はこちらの方が出ています。
この2本の短い番手はロフトが1度しか差がないのでマッスルの方はよりスピンが入りやすく、操作性を重視した設計に、キャビティは、打点のミスを助け安定した飛距離を出すといったそれぞれのヘッドの形状による特性の差がはっきり出ていますね。
形だけじゃなく、素材や製法が変わればもっと大きな差になる
今回比較した2本はどちらもフィーリングを重視したタイプであり、構造の違いだけを比べたかったのであえて同じ素材、同じ製法の物を選びました。そのため、差はそれほど大きくありませんでしたが、それでも弾道に違いが出てきていましたね。
今回の結果をまとめますと
マッスルバックは、スピンが掛かりやすく、ボールの打ち出し角が低め
キャビティバックは、スピンがやや少なめでボールの打ち出し角が高め
この結果だけ見るとマッスルバックのメリットがあまり見えませんね。
しかし、この結果を細かいところまで紐解くと、
マッスルバックは、ボールの左右の操作がしやすいのはもちろん、スピン量の操作もしやすいようにできている
キャビティバックは、操作性はやや穏やかになるが打点のミスに強く、少々のミスでも安定した距離が出せる
ということになります。
もう少しヘッドスピードが上の人であれば、数値によりはっきりとした差が出てきます。
また、現在ではキャビティの性能を高めるためにXXIOのような複数の素材を組み合わせたアイアンが多数販売されています。
今回のクラブの素材は軟鉄のみだったので極端なところがない分、キャビティバックとしての性能はほどほど、というクラブとなっていますね。
とにかく腕を磨いてボールをコントロールしたい、という向上心の強い方ならマッスルバックアイアンが一番ですが、キャビティには操作性に重点を置いたハーフキャビティ、飛距離に重点を置いた飛距離系キャビティなどたくさんの種類があります。
自分が求めている弾道が打てるアイアンを選ぶとゴルフはもっと楽になりますよ。
どんなアイアンを選んで良いかわからない方は、是非ゴルフ・ドゥの店舗に遊びに来てください。スタッフが理想に合わせて選んでくれますよ!